ざっくり解説!11年間在籍の元公務員が解説する自治体の組織構造

公務員の仕事ざっくり解説

私は新卒で入庁した地方自治体を退職するまでの11年間で、
複数の部署異動、及び様々な職務を経験しました。

自治体の部署は大きく分けて
事業・管理・窓口の3種類に分けることができます。

もちろん、
どの部署も様々な仕事をしているわけで、
例えば事業部門であっても
窓口業務をする場合もあります。

私は在籍した11年間の間で
事業部門として都市計画系を3年、
管理部門としてIT系を4年、
窓口部門として福祉系を3年、

と網羅的に部署を経験しました。

また、11年間在籍することで、
自身が経験した業務以外にも
他部署の業務内容や組織構造など
様々なことがわかってきました。

そんな私が役所の部署の特徴を
それぞれ解説していきます。

自治体組織に興味のある人の参考になれば幸いです。

※今回はある自治体の組織図を例に解説していきます。
組織編成は各自治体によって異なるため、ご了承ください。
なお、消防本部消防署は例外のため省略します。

○○市機構図

1.事業部門

市民経済部(市民課を除く)、環境部、都市政策部、都市整備部、
教育総務部(教育政策課、指導課)、生涯学習部、消防本部予防課、消防本部警防課

(代表的な業務)
自治会、花火大会や祭り、中小企業支援、観光、福祉施策、
斎場やクリーンセンターの運営、コミュニティバス、都市計画法に基づく事前協議、
建築物の確認申請、道路の許認可申請、道路の新設や維持補修、
下水道、公園、成人式、スポーツ施設

(解説)
住民向けに事業を行う部門
生活をする上で必要なライフラインや地域コミュニティ、
観光やイベント等が対象です。
業者と接する機会が多いのも特徴。

住民としてはあまり接する機会のない部署が多いですが、
どこかのチラシやポスターで目にしたことのあるといった具合です。

住民個人よりも少し大きな視点で
自治体運営に貢献したい人に向いています。

花火大会や成人式の運営、振興スポーツ施設の新設など、
事業によっては扱う規模や金額が大きく、
唯一無二の経験を積むことができます。

このため、広い視野を持ち、
積極的に行動していける人が重宝されます

一方、住民や地域の役に立ちたいという想いが強いひとにとっては、
間接的に貢献する事業のため、少し物足りないこともあるかもしれません。
自分今行っている業務がどのような役に立っているのかということを
常に意識して行動することが必要になってきます。

建築や土木などは専門職が担うケースもあり、
現場を担当する業者が窓口を訪れることもあるため、
行政組織の中でも風土が異なることがあります。

特に道路関係の部署は、
現業職という現場専用の職員を採用している自治体もあり、
いわゆる”ガテン系”の雰囲気が強いことが多いです。

事務職で異動した人もその色に染まる傾向があります。
逆に内向的な人には大変な部署です。

災害等の有事の際に待機命令を出されることが多く、
深夜になっても帰れない、あるいは
深夜に呼び出される、ということもあります。

個人のための宿泊費は出ないため、
電車通勤の人にとっては非常に働きづらいです。

2.管理部門

総務部、企画部、財務部(市民税課、固定資産税課、収税課を除く)、
会計管理者、教育総務部(教育政策課、指導課を除く)、
選挙管理員会事務局、監査委員事務局、議会事務局、消防本部総務課

(代表的な業務)
議会対応、文書管理、給与、防災、情報システム、総合計画、広報紙、
予算編成、契約管理、経理、教育委員会会議の運営

(解説)
組織内部を管理する部門。
一般的な組織において必要な財務や経理、人事などに加え、
防災や情報システム、選挙など広範囲を管理します。

民間企業では一般職の方が担当する仕事に多いですが、
自治体では職務内容が多岐にわたるため、
正規職員が主に担うケースが多い。

定型的な業務が多く、
出先に出ることも少ないため、
内勤業務が好きな方には向いている部門かもしれません。

法務や選挙、議会など、
法律によって決められていることに対して、
内容を精査して資料を作成することも多く、
より厳密な作業が求められる
ことがあります。

この部門を経験することで、
組織の全体像を把握できることも多く、
経験者は他の部門に異動した際に
重宝される
ことがあります。

一方、内容よりも形式を重視する場合が多く、
スピード感を持って臨機応変に対応することが
求められる部門に異動した際に、
苦労することがあります。

業者を含め人と接する機会が少ないため、
窮屈に感じる人が多い
ようです。

ただし、予算がある程度柔軟な自治体の場合、
情報システム部署においては大変おもしろい
業務の場合が多いです。

多くの部署は何らかの法律を所管するのですが、
情報システム部署においては、
その制限があまりありません。

人の手に代わる
より効率的なシステムを構築するという
業務の性質上、
保守的な業務は外注するため、
組織内外部のシステムを企画し、
外注するという面白みがあります。

3.窓口部門

財務部(市民税課、固定資産税課、収税課)、市民経済部(市民課)、福祉部、
健康こども部、学務課

(代表的な業務)
住民票、印鑑証明、各種税金の課税、国民健康保険、幼稚園保育園の入園、
児童手当、小中学校の転入学、生活保護、障害者手帳

(解説)
住民が一番接する機会が可能性が高いのが特徴。
市役所といえば、大体これらの仕事をイメージすることが多いのではないでしょうか。
会計年度任用職員(臨時職員)の数がもっとも多い。

住民と話す機会が多く、直にお礼を言われることもあるため、
特に目の前の人の役に立ちたいと考える人に向いています

ただし、定型的な業務が多いため、
ひたすら目の前の業務をこなす辛抱強さが必要です。

また、正規職員であっても多くの場面で思考停止することが要求されます。
改善が必要な業務が明らかな場合でも、
複数の関係機関が関わっていることが多いので、
そう簡単には変えることができないのです。

とりわけ、福祉部は一番精神的なタフさが求められる部署。
専門職を採用している自治体も多く、人と接する能力が求められます。
福祉の専門職は困っている人の役に立ちたいと考えている人が多く、
職務を超えて手助けする場合も見られます。

事務職と専門職が混在していると、
仕事に対する考えが異なることが多く、
衝突することもあります。

クレーマーの対応をする可能性も非常に高いため、
職務上できることとできないことの区別をしっかりと認識し、
それを相手に伝えることが必要となります。
それができないと病んでしまう職員もいます。

いづれにせよ、
本当に困っている人の役に立ちたいと考えることができないと、
苦痛になってくる部署であることは間違いありません。

一方で、本当に困って来庁する人が多いので、
その分感謝されることもあります。
それがやりがいとなって逆の意味で病む(病みつきになる)
人もいるようです。

まとめ

このように各部門の特徴を述べましたが、
公務員は会社員と同じように
自分で異動先を決めることはできません。

一方で先にも述べたように、
行政は総合職が多く、
生活に関するあらゆることを業務で担うため、
どの部署でも様々な業務を担当します。

○○計画の改定、○○会議の運営、○○条例の改正、
電話番号やメールアドレスは公開で窓口は常に開放、
経理など、ほとんどの部署で基幹業務以外の様々な事務を行います。

イベントなどによっては、
他部署への応援職員として手伝うこともあります。

こういった公務員の特徴に魅力を感じる人は、
採用に向けて試験勉強をしてみるのもいいと思います。

自治体の全体像を把握したい人に向けて参考になれば幸いです。